東京オリンピック柔道男子60キロ級 金メダリスト・髙藤直寿選手登場


最後まで負けない柔道こそが金メダリストの柔道だ!

 「豪快に勝つことができなかったが、これが僕の柔道です。」

東京オリンピック柔道男子60キロ級で金メダルを獲得した直後、髙藤直寿選手は、誇らし気にこう語った。

収録時の話によれば、髙藤選手のツイッターには「髙藤投げろよ」とか、「何で終わったの」みたいな書き込みが試合後にはあったという。しかし、その素人目にはわかりずらい、指導の累積での販促勝ちも、「僕の中ではそこまで考えて全部計算通りに進んだ一日だったので、これが僕が磨いてきたものだということで、これが僕の柔道ですという表現になった。」という。

5年前を知るものとしては感慨深い。リオデジャネイロオリンピック前、オリンピック前恒例の延岡合宿、髙藤選手は自信満々だった。その時の音声メモには、「自分らしく一本を獲る柔道で金メダルだけを目指したい」というコメントが残っている。当時の髙藤選手は派手な技で豪快に勝つ選手だった。しかし、敗れた。銅メダル、悔し涙をのんだ。髙藤選手と同じく金メダル最有力と言われた永瀬貴規選手も銅メダルだったのは偶然ではない。世界中のライバルが研究し対策を練ってくる。YouTubeで簡単に試合が見れる時代、得意技で勝てるほど世界は甘くなかったという事だろう。

 そして、日本に帰国すると、金メダルを宿命づけられた日本柔道ならではの洗礼。「リオの時に終わってかえってきて、並ばされるのが後ろなので、その時、ここから4年は、こういう人生なんだろうなって思った。」銅メダルを獲っても、金メダリストの後ろに並ばされる、2列になるほどメダリストがいること自体柔道以外ではありえないのだが、柔道選手が「金メダル以外はみな同じ」という意味がよくわかる。この悔しさが髙藤選手を変えた。

目指したのは負けない柔道。最後まで負けない、つまり金メダリストの柔道だ。「リオの時は一本を獲る技をたくさん持ってて、全方向に一本獲れる選手と言われてたんですけど、それがもちろんできなくなったわけではなく、それもできるけど、敢えて金メダルを獲るために指導の取り方であったり、試合時間の使い方であったり、そういう戦術の面も磨いたっていうのはありますね。」

「戦術を変える上で考え方も変えるストロングポイントを変えるということでは、柔道の技は全部できるけど、敢えて出さない、我慢するメンタル面から変えていく、必要もあるので1年とか2年とかではできないものだと思いますし、4年間で積み上げて、プラス1の1年間で磨き上げた。」

負けたことで身に着けた究極の居合のような何もせずにいるようで勝ってしまう。負けを知る男は強いのだ。

                     モリタニブンペイ


「何もしないで勝つ」。柔道・高藤直寿は金メダルのために自らのスタイルを変えた