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神奈川大学駅伝チーム・大後栄治監督

“駅伝はチームで勝つ”

箱根駅伝優勝2回の名将、大後栄治監督が言うチーム力とは!?

神奈川大学駅伝チームは昨年の箱根駅伝予選会まさかの11位で本大会出場を逃した。選手たちは何があったのか受け止められなかった。そして、その呆然とする日々は1,2か月も続き、遂には「自分は何のために存在するのか」と自らの存在価値さえも揺らぐまで追い込まれていったという。その選手たちが夢の舞台に背を向けて、本大会当日は大会補助員として沿道の整理をする。後ろに選手たちの足音を聞きながら、声援を送る観客を見て注意を呼び掛ける。その悔しさたるや、いかばかりだったろう。

大後監督は言う。「私自身もそうですし、大きなそういう苦い思いをすると、やっぱり学生が成長するんですよね。」徹底的に悔しさを味わった学生達は自主的に問題点を話し合い、4年生にはリーダーシップを取っていかなきゃいけないというそういう思いが芽生えた。その成果が昨年の予選会では選手個々がバラバラになってしまった集団走をチームとして完遂した今年の予選会だったのだ。「去年の失敗が発火点になって、いいチームになってきたなっていう風には思っています。」そう、それこそが大後監督の常々駅伝はチームで勝つというコーチング哲学だ。

大後監督がこの考えに至ったきっかけは、日体大のマネージャーをしていた学生時代まで遡る。大会まで1週間、12月25日に大雪が降った時、大学に残っていたのは本大会で走る可能性のある選手とマネージャーだけ。残りの本大会で走る可能性のない学生はすでに帰省していた。途方に暮れていると、東京、千葉、神奈川や静岡に実家がある4年生が、自主的に東京に戻り、雪かきをしてくれた。「その時に一気にチームがまとまって士気が高まった。やっぱり選手の士気を高めるのも全て脇役の仕事だなって思うようになったんです。正選手は走れない選手の悔しい思いをどう背負えるか、逆に走れない脇役に回る選手は正選手が今どんな気持ちでプレッシャーと戦いながらやっているだろうかといういことをお互いにね、お互いがお互いのことを思いやって、尊重するっていう関係が出来た時に、本当にチーム力っていうのが高まっていく。」聞いているだけで、胸が熱くなる話だ。

また大後監督はそのチーム力を最大限に引き出すために、常にチームと選手を観察し、士気を高める話やアクションをどのタイミングで、誰に、どういう風に伝えるかを探し続けているという。陸上は基本、個人種目だが駅伝はチームスポーツ。選手がつないでいるのは襷だけじゃない。チーム全員の想いをつないでいる。その姿勢が、見るものを熱くするのだろう。悔しさを知り、選手に自覚が生まれ、リーダーが成長し、名将大後監督の元、チーム力を高めた神奈川大学駅伝チーム、来年の箱根駅伝は大いに期待できると思う。お正月が楽しみだ。がんばれ、神奈川大学!

                            モリタニブンペイ

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